事例から学ぶ日本国憲法(’13): 質問と回答


■質問内容-----------------------------

第3回目の講義「選挙制度と政党」に関連した質問があります。放送講義では憲法第43条が条文として提示されたり政党制度や政党国家などが提示されていましたが、憲法第55条については、どう考えればいいでしょうか。 憲法第55条では、議員の議席を失わせるには、『定足数3分の1からなる【議会での3分の2】以上の多数決』が必要とされています。第3回目の講義の設問での法律(2000年4月に改正された法律)は、『定足数3分の1からなる議会での2分の1以上の多数決』で成立する【法律】であり、憲法論として考えるのであれば、そもそも論として、議員を失職させるには【議会での3分の2】の多数決が必要なのだから、【議会での3分の2】より軟性要件で成立可能な【法律】によって、【議会での3分の2】の多数決の手続きを踏まずに議員を失職させることは違憲なのではないでしょうか?議員の失職に関して憲法第55条が関連した議論や事例や、もしくは検討する必要は無いということなのでしょうか? 私は、日本国憲法は法律よりも重い要件を満たさないと議員の議席をはく奪できないよう第55条で定めているようですので、3分の2より要件の軽い要件で成立する法律によって議員の議席をはく奪することは違憲だと考えます。乱雑な質問かもしれませんが、質問趣旨をご快諾いただき、ご回答をいただきたいという、わたくしの素直な質問です。


■回答(岡田教授)-----------------------------

上記疑問はある意味で当然の指摘だと思われます。ただ、設問で問題となっている比例代表制で当選した議員が党籍を変更することは憲法違反、もしくはそれに準じる問題性を有していると考えられる場合はどうでしょうか。党籍変更に憲法上問題がないと考えられるのに、55条の定める要件よりゆるやかな要件で議席を奪うことには当然憲法上問題があると考えられることになります。
しかし、党籍変更それ自体が憲法から見て許される行為ではない、あるいはあってはならない行為だとすれば、そもそも議員たる地位を得るための前提である憲法的正統性を欠くということになり、それを法律で定めても憲法上許されると考えられることにならないでしょうか。したがって、本設問で問われるのは、比例代表制で選ばれた議員が、当選後に党籍変更することに憲法上問題があるのかどうかについて、どのように考えられるのかということになります。

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