財産所有制民主主義について考えたメモ

ロールズの正義論について書かれた書籍を読んで、
財産所有制民主主義という概念を知ったのですが、
はてさて、実践的であるかを検討します。

前提として、私は、ロールズの思想を否定はしません。
自由と民主主義を守るための考え方の一つだと思っています。

専制と抑圧から解放されるために、王権を制限し、
憲章や憲法を立てて、民主主義が広がっていた歴史の後に、
今度は、王や貴族ではないけれども、圧倒的な経済力を背景に、
それと同等の社会的立場に立つ人たちが現れ、
自由と民主主義の目的が崩れてしまってあることも確かである。

1.生産手段を持たない層について
ロールズは、生産手段を持たない労働者と、資本家との
間の格差が正義の二原則に適っていないと言っていたそうですが、
現代において、安価な手数料で公開株式を購入することができることを
考えると、フリーターでも、生産手段の一部を手にすることが
できるわけですから、それで格差が無くなっているのかというと
そういう問題でもないような気はします。
もちろん、ビルゲイツのような大富豪と、一般サラリーマンを
比較すれば、圧倒的に政治的権力を持っているのはビルゲイツであり、
それは、たしかに生産手段をたくさんもっているからという点はある。

2.財産所有制民主主義は理想であるか否か
国がすべての資本を所持し、国民にリースで生産手段を貸し出すと
いう仕組みは、どうもしっくりこない。
なんというか、つまり社員全員が社長で、国会を社長会議みたいな
ものにするようなイメージに捉えられるのだけれど、
考えてもみて欲しい、貴方の職場に現場監督や課長がいなかったら、
組織としてまとまるだろうか?絶対と言っていいほど、まとまらない。
会社に、役職があるから組織として成り立っているのであって、
そういった役職といった身分の違いがあるから収入面でも格差が生まれるのである。

3.では格差は許容されるのか
これは難しい問題である。
自由を保障しようとすれば、格差は是正されるべきである。
仮に、セブンイレブンのコンビニで働くフリーターが、
セブン&アイ・ホールディングスの株を購入し、株主総会で
質問したとして、どれほどの理解を大株主に得られるだろうか。
やはり、限定的ではある。
そもそも論として、貧困によりフリーターしかできないような場合、
株を買って株主総会で質問するという知識がない可能性もあるし、
地方のフリーターに、東京の株主総会に出席できるほどの、
財力があるとも思えない。交通費やバイトを休んでの給料の無い日を
考えると生活していけないという可能性も考えられる。
誰もがプロ市民であるというわけではない。
やはり、許容できる格差については、限度があると考えられる。

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